愛媛大学大学院農学研究科
附属ハダカムギ開発
研究センター Center for Development of Hulless Barley

センターについて

1.センター設置の背景

麦畑

 裸麦は大麦のひとつで、愛媛県は34 年連続で生産量日本一であり県内の主力農作物です。皮が外れやすいため加工適性に優れ、その多くは麦めし、焼酎、麦味噌に用いられています。特に麦味噌は瀬戸内・北部九州地域独自のものであり、裸麦は地域が育む伝統的食文化を下支えしています。また、裸麦に多く含まれる水溶性食物繊維であるβ-グルカンやその他の機能性成分には整腸作用や生活習慣病、認知症などの予防効果が認められていることから、健康食品や病院食、介護食としての利用が期待されています。このように昨今の健康志向や国産志向の高まりから需要は年々増加しており、超高齢社会問題を勘案すると、米食、パン食に続く第3 の主食となるポテンシャルを秘めています。このような状況の中、裸麦の生産、加工および機能性開発における課題は多いことから、裸麦の資源開発、生産振興および用途の拡大を目指して「はだか麦資源開発研究グループ」を結成し、平成28 年度に農学研究科研究グループ(ARG)として認定されました。

マンネンボシとハルヒメボシの断面

 研究グループでは「①生産振興及び実需者ニーズに応えるための情報収集・分析」「②遺伝資源の整備とTILLING 法を用いた遺伝子解析システムの確立」「③ニーズ分析の結果を踏まえた有望系統群の選別」および「④形質、食品加工、機能性成分の評価及び有効性の検討」を主な活動として展開してきました。これまでに「①生産振興及び実需者ニーズに応えるための情報収集・分析」では、養鶏におけるエコフィード、国内飼料自給率の改善に資する麦糠の養鶏飼料としての有効利用活用について検討してきました。「②遺伝資源の整備とTILLING 法を用いた遺伝子解析システムの確立」では、マンネンボシ変異コレクション約8000 系統を整備するとともにTILLING 法による遺伝子解析システムを構築しました。このコレクションを活用して「③ニーズ分析の結果を踏まえた有望系統群の選別」において5 つのモチ性系統を選抜しました。「④形質、食品加工、機能性成分の評価及び有効性の検討」においては、裸麦100%生地のパウンドケーキの開発、酢酸菌を作用させた裸麦甘酒を愛媛県特産の麦味噌に含有させた商品の開発、機能性成分トコトリエノール含有裸麦の認知症予防効果の検証等を行っています。

 今後はこれまでに構築してきた遺伝資源コレクションの維持と管理、新たな遺伝資源コレクションの構築、品種の育成に関わる種子管理体制の強化が求められます。活動拠点である松山市東方町は松山平野の南部に位置し、裸麦県内主要生産地の一つである東温市に近いことから、一部では米麦二毛作体系による土地利用が展開されています。これまでの活動で構築した研究シーズ、遺伝資源は応用できる段階に到達していると考えられることから、研究グループの体制を強化してセンター化することが裸麦の生産振興、普及および需要の拡大等にさらに貢献できると判断し、センター化することとなりました。

ハルヒメボシとマンネンボシの開花後日数

 

2.センター設置の目的

 本センターは、裸麦遺伝資源コレクションを構築し,それを活用した機能性ならびに生産性に関わる優良形質の選抜と品種開発を行うとともに,実需者ニーズを反映した有効活用法を開発することで,裸麦の生産振興と需要拡大に貢献することを目的としています。