先生・在学生からのメッセージ|愛媛大学農学部生命機能学科

関藤 孝之先生

細胞もリサイクルが大切!

液胞はただのゴミ箱か?

Q. 現在の研究テーマについて教えて下さい

液胞膜を介したアミノ酸輸送です。液胞は細胞の中に発達するオルガネラで大きな袋のようなものです。高校の教科書では老廃物を捨てるゴミ箱みたいな記述のみですが、2016年に大隅先生がオートファジーの研究でノーベル賞を受賞し、液胞の見方が少し変わってきました。オートファジーでの液胞の役割は細胞中のタンパク質を分解してアミノ酸にすることです。このアミノ酸はサイトゾルへと排出され、それを材料に新たにタンパク質が作られると考えられています。ですので液胞は細胞のリサイクル工場としての側面が注目されるようになっています。
オートファジーは全て解明されたのかというと、むしろ分からないことだらけです。液胞からどのようにアミノ酸を排出するのかもその一つです。液胞は膜に包まれていますので、アミノ酸は膜を通過しなければならない。そのためには膜を貫通した通り道が必要で、私たちはこの通り道となるタンパク質をトランスポーターとよんでいます。今は液胞にどんなトランスポーターがあるのかを一つ一つ見つけている段階です。
面白いことに、いろんなトランスポーターが見つかって、それぞれ運ぶアミノ酸が異なっています。それから液胞の外へ運ぶトランスポーターだけでなく、液胞の中へと運ぶトランスポーターも見つかっています。さらに周囲の環境にアミノ酸がなくなると活性が上がるものもあったりして、トランスポーターにはそれぞれ個性があることが分かってきています。

研究は新たな発見が面白い

Q. 農学部で教育研究するきっかけ/やりがいは?

私は理学部出身で現在の研究もいわゆる基礎研究です。あまり応用研究に触れたことはありません。農学部の中で、ある意味異色な研究をやっていますが、学生さんが人の役に立つ立たないの尺度ではなく、細胞が生きて行く仕組みを知ったり、解き明かしたりすることで驚いたり楽しんでくれているのを見ると、農学部で研究する意義みたいなものを感じます。

アミノ酸の新たな機能を探りたい

Q. 研究の将来の目標は?

液胞膜には多くのアミノ酸トランスポーターが存在すると予想されます。それらを全て明らかにしたい。その一方で、細胞にとって何の役に立っているのかといった生理的な部分を解き明かしたいと思っています。液胞の中のアミノ酸は直感的には栄養がなくなった時に使う備蓄と考えてしまいますが、本当にそうなのでしょうか?証拠はあるのでしょうか?少なくとも私はそれだけとは思っていません。アミノ酸の役割をタンパク質の材料としてだけではなくもっと広い視点で捉えて研究を進めたいと思っています。

実践的な知識を身につけてほしい

Q. どんな授業/実習を担当されていますか?

担当する遺伝子解析学の講義ではPCRや遺伝子のクローニングといった現代の分子生物学の土台となる実験手法の原理を学びます。また遺伝子操作技術はどんどん進化していますから、そういった新しい手法についても解説しています。実験の原理を理解することは、皆さんが実際に実験を行う時にミスを防ぎ、思ったようなデータが出ない時に対処する上ですごく大切です。実際に研究を進める時に役に立つ知識を身につけてほしいと思っています。

「無駄」を楽しんで

受験生の皆さんへのメッセージ

基礎研究というと「人の役に立たない」イコール「無駄」という発想があります。しかし今の応用研究の「種(タネ)」は全て基礎研究から発生したものです。生命のいろんな現象がなぜ/どのように起きるのかに目を向けてそれを解き明かすことの楽しさを知って欲しいと思います。

関藤先生の研究室(遺伝子制御工学研究室)の情報はこちら

遺伝子制御工学研究室のホームページはこちら

トップへ戻る