先生・在学生からのメッセージ|愛媛大学農学部生命機能学科

山内 聡先生

天然の有機化合物

Q. 現在の研究テーマについて教えて下さい

 抗酸化活性で有名なポリフェノール類の一つである、食事として食べる野菜にも含まれるリグナン類について研究しています。リグナン類は、抗酸化活性のみならず、生物に対して様々な機能を発揮します。しかし、詳細ははっきりしていません。植物から取り出すよりも実験室で合成する方が試験に用いるサンプルを多く得ることができるので、生物活性試験を行うために、有機合成化学的手法を用いて作り出す方法を最初に開発しています。リグナン類には平面構造では1つに見えても、立体的には複数の構造である立体異性体が存在します。野菜に含まれるマタイレジノールのすべての立体異性体を示します。

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 合成する時に重要なのは、この立体異性体を作り分けることです。立体異性体間でどのように生物活性が異なるかを調べ、次に、天然に存在するリグナン類に似た構造の化合物を合成して、構造を変えるとどのように生物活性が変化するかを調べています。 

 この研究をもとに、野菜に含まれるリグナン類が、人や他の生物にどのような影響を与えるかを明らかにしようとしています。また、このリグナン構造を基にして、医薬品や他の生物の成長をコントロールできる化合物を作り出すための基礎データを集めています。

 薬草として使われている植物中に含まれる6−アルキルーα--ピロン化合物についても同様な研究を行っています。

 我々が口にする食品には、生物が作り出す多くの有機化合物が含まれていますが、その人に対する働き、他の生物に与える影響は分からないことが多いのというのは事実です。

Q. 農学部で教育研究するきっかけ/やりがいは?

「農学」とはとても分野が広く、高等学校の理科科目である物理、化学、生物、地学、さらに、経済学まで含まれています。農学部内で研究、教育を行っていると、他の様々な専門の先生方とお話ができて良い刺激を受け、モチベーションが高くなります。他の研究室との共同研究も盛んに行われていて、研究も広がります。研究室間での壁がないというのが愛媛大学農学部の大きな特徴だと思います。

Q. 研究の将来の目標は?

 身近に存在する、生物が作り出す有機化合物の働きの解明を目指しています。新たな医薬、農薬の開発につながることを目的にしています。

Q. どんな授業/実習を担当されていますか?

 高等学校では有機化学は「暗記」でしかないかもしれませんが、有機化学反応は理解するものです。生物の体内には多くの代謝系(例えば、呼吸系路、クエン酸回路)が知られていて、高等学校の教科書では文字で表現されています。しかし、代謝系は化学反応であって、文字で表されている化合物は構造式で表現されるべきであり、我々はそれぞれの化合物の構造が代謝系でどのように変化していくかを学ぶべきです。また、食事を通して体内に取り込まれた食品、生の食品、加工された食品中では、もともと含まれる有機化合物が化学反応しています。例えば、醤油、味噌に色が付いているのも化学反応が起こっているからですし、漬物に色が付いているのも、もともと漬物の材料である植物が有機化合を持っているからです。このような身近な化学反応を理解できるようになるための授業、実習を行っています。

受験生の皆さんへのメッセージ

 生物の好きな受験生、化学の好きな受験生はもちろん、生物にも化学にも興味を持っている受験生、生物を選択するか、化学を選択するか迷っている受験生は是非、生命機能学科を受験してください。

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