先生・在学生からのメッセージ|愛媛大学農学部生命機能学科

渡辺 誠也先生

君の基質は?

Q. 現在の研究テーマについて教えて下さい

 微生物の多くは肉眼では見ることができませんが、100˚Cを超える深海の熱水中や、塩の結晶が析出するほどの塩湖、pHが1∼2という超酸性など実に多様な環境に生息しています。また、私たちが栄養にできないような物質を代謝あるいは分解できるものも多く、その能力は生命の設計図であるゲノムDNAに書き込まれている遺伝子から作られるタンパク質(酵素)によるものです。酵素は生体触媒とも呼ばれ、ターゲットとなる化合物(基質)に対する選択性が極めて高く、無機触媒に比べてはるかに温和な条件で反応が進行し副産物も出さないため、バイオプロセスの主人公として物質生産・環境浄化等の幅広い分野で活用されています。技術革新により長大な微生物のゲノムDNA解読が容易になった現在では、酵素そのものよりも遺伝子のほうが先に分かる時代になりました。一方で、膨大な数の「機能未知遺伝子」がデータベースに埋もれています。私の研究室では、上記のような産業的応用も念頭に新しい反応を触媒する酵素(遺伝子)の発見に取り組んでいます。

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 遺伝子がありそれが酵素として働くならば、必然的に基質が存在し細胞内では実際にその物質と出会っているということになります。機能未知というのは、単に私たちがその相手を見つけられていないだけなのです。酵素にいろいろな化合物を与えては測定装置と"にらめっこ"するという作業を繰り返していきます。そして、ある化合物を加えたとき突然、画面の数値が動き出し反応が始まるときがあります。そのときの興奮と感動は何物にも替え難いものであり、ゲノムDNAの上にはこうした「基質との運命の出会い」を待っている酵素遺伝子がまだまだたくさんあるのです。さしずめ、数年前にヒットした映画「君の名は」ならぬ、「君の基質は?」といったところです。

Q. 農学部で教育研究するきっかけ/やりがいは?

 実は、私が学位を取ったのは理学部です。理学部・農学部いずれにもバイオを研究する分野(学科)がありますが、両者の違いは「理学部は知的好奇心のおもむくままに研究できるところ(基礎研究重視)」「農学部は人間や地球への貢献が求められるところ(応用研究重視)」ではないかと考えています。農学部で教育研究するきっかけは、ズバリ「農学部に採用が決まったから...」というだけですが、上記をテーマにしたのも必然性があってのものではないので、人生は得てしてそのようなものなのかもしれません。「やりがい」というものとは少し違うかもしれませんが、四国の一地方大学である愛媛大学であっても十分に高いレベルの(教育)研究はできると信じています。ですから、常に現状に満足することなく向上心・野心を忘れずにいたいと思っています。

Q. 研究の将来の目標は?

 私の夢は研究者になることでしたし、現在の研究者を取り巻く厳しい状況を考えれば、いわゆる「生きていくための目標」は達成したと言えなくもありません。一方、私は実験が大好きですが手は2本しかありませんからできることには当然限界があります。今後は、自らの発見に基づいた研究テーマの面白さを学生さんと共有することで、私の予想を超えた進展や発見を見てみたいと思っています。

受験生の皆さんへのメッセージ

 上にも書いたように、私自身のこれまでの人生には行き当たりばったりの点が多々ありましたから、皆さんに高所から語れるようなメッセージはありません。ただ、振り返ってみると大成している友人は必ずしも最初から講義の成績がよかったわけではなく、研究室に入ってからたまたま成果が出たケースもたくさんありました。つまり、皆さんに等しくそうなれるチャンスがあるということです。自信と期待を持って農学部に来て下さい。

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