大学院農学研究科の森松和也特任講師の論文が学術雑誌Microorganismsにオンライン掲載されました
大学院農学研究科の森松和也特任講師は、豆乳中の枯草菌芽胞の高圧発芽誘導殺菌(図1)と熱による前/後処理をそれぞれ組み合わせることで、殺菌を効率化できる可能性を示しました。本研究成果は、学術雑誌Microorganismsにオンライン掲載されました。
・耐熱性芽胞は飲料の常温保存を行うためには滅菌する必要のある食品危害菌として認識され、滅菌のために高温の熱殺菌を行うと飲料の味などが劣化してしまうが、高圧発芽誘導殺菌では熱劣化を最小限にした上での芽胞の殺菌を行うことができる。
・豆乳中の枯草菌芽胞において、熱による前処理と高圧発芽誘導殺菌を組み合わせた場合、80 ℃以下では殺菌促進が、90℃以上では殺菌抑制が示された。
・豆乳中の枯草菌芽胞において、熱による後処理と高圧発芽誘導殺菌を組み合わせた場合、未処理芽胞に比べ、高圧処理芽胞では耐熱性が低下し、熱による後処理が短時間となった。
【研究の背景と経緯】
耐熱性芽胞は飲料の常温保存を行うためには滅菌する必要のある食品危害菌として認識されている。その一方で、滅菌のために高温の熱殺菌を行うと飲料の味などが劣化してしまう。そのため、熱劣化を最小限にできる殺菌技術が必要となり、近年では高圧発芽誘導殺菌が注目されている。本研究では、豆乳を飲料モデルとして使用し、高圧発芽誘導殺菌と熱による前処理/後処理とを組み合わせた処理での枯草菌芽胞の殺菌試験を行った。
【研究の内容】
その結果、豆乳中の枯草菌芽胞において、熱による前処理と高圧発芽誘導殺菌を組み合わせた場合、80 ℃以下では殺菌促進が、90℃以上では殺菌抑制が示された(図2)。また、豆乳中の枯草菌芽胞において、熱による後処理と高圧発芽誘導殺菌を組み合わせた場合、未処理芽胞に比べ、高圧処理芽胞では耐熱性が低下し、熱による後処理が短時間となった(図3)。したがって、高圧発芽誘導殺菌と熱による前処理/後処理とを組み合わせた処理を製造プロセスに組み込むことで常温保存飲料の熱劣化を最小限にできると考えられる。
【今後の展望】
熱による前処理/後処理が高圧発芽誘導殺菌に与える影響をより詳細に調べていく必要があり、そのメカニズムの解明を行いたいと考えている。
【補足説明】
[耐熱性芽胞]
芽胞形成菌が環境ストレスの影響で休眠状態となった形態である。環境ストレスが良くなると増殖するために発芽し、栄養細胞の形態となる。芽胞形態は全てのストレスに対して強いストレスを有しているのに対し、栄養細胞はストレス耐性が比較的低くなる。熱滅菌では芽胞は120℃の熱処理が必要であるのに対し、栄養細胞は60℃の熱処理で十分である。
[高圧発芽誘導]
圧力により芽胞の発芽レセプターを刺激し、人為的に発芽を進行させることができる技術である。
[枯草菌]
Bacillus subtilisとも呼ばれ、研究に広く活用されている。納豆菌も枯草菌の1種である。
【論文情報】
掲載誌:Microorganisms
題名:Combination of Medium-High-Hydrostatic-Pressure Treatment with Post-/Pre-Heat Treatment for Pasteurization of Bacillus subtilis Spore Suspended in Soy Milk
著者:森松和也
DOI:doi.org/10.3390/microorganisms13071469
<大学院農学研究科>

