お知らせInformation

大学院農学研究科2回生の丸山開さん、杉元宏行准教授、杉森正敏教授の論文が学術雑誌Journal of Wood Scienceにオンライン掲載されました

光がスギ材の色に与える影響を可視化

2025年12月、大学院農学研究科2回生の丸山開さん、杉元宏行准教授、杉森正敏教授の研究グループは、スギ(Cryptomeria japonica)材が紫外線(UV)や可視光(VIS)照射を受けた際の光学特性の変化を詳細に計測・解析した論文を Journal of Wood Science に発表しました(20251230日公開、オープンアクセス)。

【ポイント】

・可視光スペクトルを用いた定量的手法を用いることで、従来の表色系を用いた色評価では把握が困難であった、光照射に伴う木材の光学的変化を詳細に把握することに成功した。
・異なる照射波長の光は、それぞれ異なるスギの可視光反射特性(色)変化を引き起こすことを明らかにした。
・スギの心材と辺材とで、異なる色変化が生じる機構解明の道筋を示した。

【研究の背景と経緯】

木材は古くから建築・家具・内装・構造部材として利用され、特にスギは日本で最も主要な造林樹種の一つとして多様な用途で用いられています。しかし、自然環境下での光照射(紫外線・可視光)は木材の色や外観を変化させるため、建材や内装材としての価値維持の課題となっています。色変化の原因を科学的に解明し、材質設計や品質評価基準に結びつけることは、木材製品の長期性能確保・意匠性維持・利用拡大において極めて重要です。

本研究はこのような課題意識のもと、スギ材の心材と辺材それぞれに異なる光波長を照射し、そのスペクトル応答および変色メカニズムを可視化・定量化することを目的に実施されました。(図1

図1.png

図1 波長の異なる光の照射で、木材の可視光特性はどう変化するか?

【研究の内容】

 紫外線〜可視光の異なる波長で試料を照射し、可視光反射・透過スペクトルに生じる変化を高精度に測定しました。その結果、3つの波長依存性の変化(A,B,C)を見出しました。(図2

 照射波長が279-373nmの紫外光によって、濃色化を引き起こす、吸収量の増加を確認しました(A変化)。この変化は、木材の構成成分の一つのリグニンの分解と関連していることを示し、これにより、特定の可視光領域(430nm付近)の木材の反射率変化を引き起こしていることを明らかにしました。

 次に、照射波長が404-496nmの可視光によって、淡色化を引き起こす、吸収量の低下を確認しました(B変化)。この変化がどの成分によるものかは明らかとはなっていませんが、照射波長に応じた可視光領域(404-496nm)の木材の反射率変化を引き起こしていることを明らかにしました。

 照射波長が279-435nmの紫外・可視光によって、心材のみに濃色化を引き起こす、吸収量の増加を確認しました(C変化)。心材には樹種を特徴づける抽出成分が存在し、この成分の変化が反射率に変化を与えていることが明らかとなりました。

図2.png

図2 照射する光によって異なる、木材に生じる3つ(A、B、C)の変化

【今後の展望】

本研究の成果は、木材の色変化を経験的な現象としてではなく、光学特性の変化として定量的に捉える新たな評価手法を示しています。今後は、分光特性に基づく色変化予測モデルの構築を通じて、木材製品の意匠設計や耐候性評価、さらには木材利用の高度化に貢献することを目指します。

【補足説明】

[可視光スペクトル]とは、光を色ごと(波長ごと)に分けて調べる方法で、木材がどの色の光を反射し、どの色の光を吸収しているかを詳しく知ることができます。これにより、木材の「色の変化」を、感覚ではなく数値として評価することが可能になります。

[心材]とは、木の中心部にあたる部分で、色が濃く、耐久性が高いのが特徴です。一方、[辺材]は木の外側に近い部分で、水分を運ぶ役割を持ち、一般に色が明るい傾向があります。本研究では、これらの部分で光による色変化の起こり方が異なる点にも着目しています。

【論文情報】

掲載誌:Journal of Wood Science
題名:Effect of irradiation with ultraviolet and visible (VIS) light on the VIS spectral  properties of sugi heartwood and sapwood
著者:丸山開、杉元宏行、杉森正敏
DOI:doi.org/10.1186/s10086-025-02241-w

<大学院農学研究科>