愛媛大学農学部・大学院農学研究科

グリーンテクノロジー研究グループ(代表者:安部 真人)

設置目的

 持続可能な社会の実現のためには、再生可能資源から始まり生分解性素材(グリーンケミカルズ)に至る循環型の物質サイクルを構築することが必要である。特に、再生可能資源として植物などの生物由来資源(バイオマス)を用いることは、実質上の二酸化炭素排出をゼロとするカーボンニュートラルに繋がる。従来の研究ではグリーンイテクノロジーとして、バイオマスから既存の燃料・素材に導く反応開発と、既存の素材に生分解性を付与する改良策がそれぞれ模索されてきた。本研究グループでは、グリーンテクノロジーに関連する複数の研究分野が連携し、より合理的な分子デザインに基づいた物質サイクルの実現を目指す。具体的な分子デザインにはこれまでに活用例の少ない「脂質」を選定し、その高い生分解性を担保したうえで医農薬シーズをはじめとするグリーンケミカルズの導出を展開する。一方で、本研究グループが目指す物質サイクルの出発原料はバイオディーゼル燃料(Bio diesel fuel: BDF)や油脂生産で副生する廃グリセリンに設定する。廃グリセリンは、グリセリンと高アルカリ水の混合物であるために難燃性で高コストの産業廃棄物となっている。しかし、グリセリンやその誘導体は脂質の基本構造をなす分子であると同時に食品や医薬・化粧品に添加される有用素材でもある。こうした事情から、廃グリセリンを廃棄することなく有用なグリーンケミカルズに変換することができれば、新たな産業シーズの創出と共にBDFの効率的生産に貢献することが期待できる。

活動計画概要

本研究グループではBDF生産時に副生する廃グリセリンを原料とし、生分解性の医農薬シーズをはじめとする機能性素材を導出することを目指す。

本グループ活動の概要図

 研究代表者の安部(生命機能・准教授)と阿野(生命機能・准教授)が廃グリセリンからのシーズ導出を担当する。安部は化学合成を、阿野は酵素合成をそれぞれ専門技術に有しており、互いに補完的な連携によってグリセリン誘導体を創出することができる。

一方、八丈野(食料生産・准教授)と高橋(プロテオサイエンスセンター・准教授)がシーズ化合物の機能性評価を担当する。それぞれ、植物病理とタンパク質科学の専門的知見に基づいた機能性評価を迅速にフィードバックすることでシーズ導出を加速する。

 廃グリセリンのサンプルは愛媛県内のバイオディーゼル生産事業者からの試料提供を受ける。