愛媛大学農学部・大学院農学研究科

生命機能科学応用開発グループ(代表者:渡辺誠也)

研究グループの活動目的

 塩基配列の解読技術の進歩により、生命の設計図であるゲノムDNAに書き込まれた遺伝子は簡単に分かるようになった。また、大腸菌など他の生物を宿主として対応するタンパク質を作らせることも可能であるが、その機能を知ることは容易でない。例えるなら、紙面に書かれた設計図通りに正確に組み立てたのに、できた物体の使用用途が不明なようなものである。これら「機能未知タンパク質(遺伝子)」の機能推定は、機能が分かっているものとの(設計図やできた物体の)類似性に依存しているが、似たものが全くない場合も非常に多い。我々は、この類似性に加え「遺伝子のゲノム上での位置関係」に注目して、"真に新しい機能を持つタンパク質の発見を目指している。つまり、機能未知遺伝子の周辺にある遺伝子の情報からその機能を推定するというものである。

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新しい楽器が見つかれば聞いたことのない音色が出てオーケストラに加えればより深みのある演奏になるように、新しいタンパク質機能の発見は、生命現象のさらなる理解や有用物質生産・成分計測・生物農薬などの産業応用にもつながる。また「タンパク質・酵素・微生物」をキーワードに、研究交流会・セミナー・高校生の体験実習などを通して、学術的発見の還元・農学部の受験生獲得・農芸化学の面白さの普及にも貢献する。

研究グループの活動実績の概要

 「見た目から真の機能が想像できない」ほど学術的価値が高いと言える(例えば、バリンビンは珍しい楽器の中でも特に難しいかもしれない)。3年間でそれぞれ12報、13報、11報で計36編の学術雑誌への掲載があったが、こうしたインパクトの高い一流誌への掲載は25編にのぼる。高校生向けに、農学部主催の高大連携企画およびオープンキャンパス、出張講義、高等専門学校からのインターンシップ受入れを行った。外部講師による学内向け研究セミナーを計5回実施した。

今後の活動計画概要

 学術研究とアウトリーチ活動は、引き続き実施していく。3年間の活動で特筆すべきは、構造生物学的アプローチが軌道に乗ったことである。構造生物学とは、主にX線結晶回折法によりタンパク質の立体構造を決定し、その情報から作用機序を明らかにしたり人工的な機能改変を行ったりする学問である。結晶作製技術や大型放射光施設でのデータ収集効率の飛躍的な進歩によりある程度のルーチン化が可能となったため、グループ内外からターゲットタンパク質を受け入れる。これを発展させ、まずは学部内でセンター化し、将来的には医薬分野に特化したPROSとは異なるタンパク質専門研究拠点構築を目指す。