愛媛大学農学部・大学院農学研究科

吉原健太郎さん(農学部4年生)の筆頭著者論文が米国の学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました【8月1日(土)】

 吉原健太郎 愛媛大学4年生(生命機能学科 応用生命化学コース 生化学教育分野所属)、渡辺誠也 大学院農学研究科教授(沿岸環境科学研究センター教授 兼任)、渡邊康紀 大学院農学研究科助教(現 山形大学理学部講師)の研究グループは、細菌のL-アラビノース代謝経路に関わるL-アラビノース1-脱水素酵素(AraDH)の「酵素-基質-補酵素複合体」の立体構造をX線結晶回折により初めて明らかにしました。

 本酵素は渡辺教授(当時 京都大学)により2006年に初めて報告されたもので、生化学研究室の伊賀千夏さん(当時4年生;2018年度卒)により「酵素-補酵素複合体」の構造解析に昨年成功していました。今回基質結合の様子も分かったことで、アミノ酸配列の相同性がある類似酵素とは異なるユニークな触媒メカニズムの全容が明らかとなりました。
 本研究成果は、2020年8月1日に米国の学術誌Biochemical and Biophysical Research Communicationsにオンライン掲載されました。

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     吉原さん           AraDHの結晶と酵素に結合した基質(L-Arabinose)と補酵素(NADP+)

【吉原健太郎さん(筆頭著者;上写真)からのコメント】
論文執筆にあたっては、実験を重ねてその結果からストーリーを組み立て、さらに文献を参考にしたりしながら新しい知見を見出していきます。この一連の作業は、地道で根気がいると実感しました。しかし、論文が受理されて自分の成果が認められたときの喜びはその分大きく、「また執筆したい!」という気持ちが湧いてきました。これからも世界に認めてもらえるような研究を目指して頑張ります。

【渡辺教授(共筆頭著者・責任著者)からのコメント】
AraDHの最初の報告から14年経って、触媒メカニズムを議論するのに必要な立体構造のすべてを、指導学生の研究のバトンリレーにより明らかにできました。吉原さんは、大型放射光施設SPring-8でX線回折データを収集し、それをもとに構造決定を行っただけでなく、論文執筆にも果敢に挑戦するなど筆頭著者に恥じない貢献をしました。今後の研究の飛躍にも乞うご期待です。

【論文情報】
掲載誌:Biochemical and Biophysical Research Communications
題名:Crystal structure of bacterial L-arabinose 1-dehydrogenase in complex with L-arabinose and NADP+.
DOI:https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2020.07.071
著者:Kentaroh Yoshiwaraa,1, Seiya Watanabea,b,c,1, Yasunori Watanabea,b,d
a Faculty of Agriculture, Ehime University, 3-5-7 Tarumi, Matsuyama, Ehime 790-8566, Japan
b Department of Bioscience, Graduate School of Agriculture, Ehime University, 3-5-7 Tarumi, Matsuyama, Ehime 790-8566, Japan
c Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University, 2-5 Bunkyo-cho, Matsuyama, Ehime 790-8577, Japan
d Faculty of Science, Yamagata University, 1-4-12 Kojirakawa-machi, Yamagata, Yamagata 990-8560, Japan
1 These authors contributed equally to this work.