愛媛大学農学部・大学院農学研究科

吉原健太郎さん(農学部4年生)の筆頭著者論文が米国の学術誌「FEBS Letters」に掲載されました【1月22日(金)】

吉原健太郎 愛媛大学4年生(生命機能学科 応用生命化学コース 生化学教育分野所属)、渡辺誠也 大学院農学研究科教授(沿岸環境科学研究センター教授 兼任)、渡邊康紀 大学院農学研究科助教(現 山形大学理学部講師)の研究グループは、細菌のL-ラムノース代謝経路に関わるL-ラムノース1-脱水素酵素(RhaDH)の立体構造をX線結晶回折により初めて明らかにしました。
 本酵素は渡辺教授(当時 京都大学)により2008年に初めて報告されたもので、Short-chain dehydrogenase/reductase(SDR)という大きなタンパク質のグループに属しています。今回は、「酵素のみ」の構造に加え、「補酵素であるNAD+との結合型」「補酵素であるNADP+との結合型」「基質であるL-ラムノースとNAD+との結合型」の構造をすべて決定することができました。これにより、他のSDR型酵素とは異なるユニークな基質・補酵素特異性のメカニズムの全容が明らかとなりました。
 本研究成果は、2021年1月22日に米国の学術誌FEBS Lettersにオンライン掲載されました。

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     吉原さん              RhaDHの結晶と酵素に結合した基質(L-Rhamnose)と補酵素(NAD+

【吉原健太郎さん(筆頭著者;上写真)からのコメント】

今回はよく知られたグループに属する酵素についての研究でしたが、それでも予想外の知見を得ることができました。この面白さを他者にも理解してもらえるようにストーリーを組み立て、それが世界に認めてもらえたことの喜びはとても大きなものでした。この経験を胸に、今後はもっと新規性やインパクトのある研究にも挑戦してさらに論文を発表したいと思っています。

【渡辺教授(共筆頭著者・責任著者)からのコメント】

SDR型酵素は構造が解かれている数が非常に多く、比較的結晶が出やすいのではないかとは思っていましたが、欲しい複合体構造がすべて解けたのは吉原くんの努力の賜物です。筆頭著者論文も2報目となり、結晶化や構造解析といったテクニカルな面だけでなく、データの解釈やそれに基づいた議論にも大きな進歩が見られました。今後もますます頑張って欲しいと思います。

【論文情報】
掲載誌:FEBS Letters
題名:Crystal structure of L-rhamnose 1-dehydrogenase involved in the non-phosphorylative pathway of L-rhamnose metabolism by bacteria.
DOI:10.1002/1873-3468.14046
著者:Kentaroh Yoshiwaraa,1, Seiya Watanabea,b,c,1, Yasunori Watanabea,b,d
a Faculty of Agriculture, Ehime University, 3-5-7 Tarumi, Matsuyama, Ehime 790-8566, Japan
b Department of Bioscience, Graduate School of Agriculture, Ehime University, 3-5-7 Tarumi, Matsuyama, Ehime 790-8566, Japan
c Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University, 2-5 Bunkyo-cho, Matsuyama, Ehime 790-8577, Japan
d Faculty of Science, Yamagata University, 1-4-12 Kojirakawa-machi, Yamagata, Yamagata 990-8560, Japan
1 These authors contributed equally to this work.