愛媛大学農学部・大学院農学研究科

大学院農学研究科の丸山広達准教授らによる研究成果が国際学術誌に掲載されました【1月14日】

 愛媛大学大学院農学研究科の丸山広達准教授と英国University College LondonのEric Brunner教授らの研究グループは、英国成人を対象に、肥満関連一塩基多型を多く有している者ほど、高いBody mass index(BMI)の軌跡(推移)を示すとともに、その関連は脱抑制という食行動により約34%説明できるという疫学研究結果を発表しました。

 肥満は心疾患や糖尿病等生活習慣病の発症リスクを高めることがわかっており、また世界的に肥満人口の増加がみられる、国際的な健康課題の一つです。21世紀に入ってから、肥満に関連した遺伝子の一塩基多型が数多く見いだされ、さらに肥満に関連した一塩基多型を有する遺伝子が、摂食行動に影響を及ぼすこともわかってきました。

今回の研究では、英国ロンドンの公務員を対象とした大規模な疫学研究Whitehall II Studyにおいて、肥満に関連する92の一塩基多型を測定・点数化(Gene risk score)し、また質問紙(Three Factor Eating Questionnaire)により評価した食行動の点数を算出しました。Gene risk scoreと食行動の点数は中央値で2区分(低群、高群)に分け、BMIの繰り返し測定データとの関連を分析しました。その結果、Gene risk scoreの高群は、低群に比べて、脱抑制(Disinhibition:気分が変化したときや他者との食事の機会等で食事量が増えるといった外的刺激に対する反応性)、空腹感(Hunger)といった食行動の点数が高く、またBMIも高い軌跡を示しました(図1a)。食行動についても同様に、脱抑制、空腹感の点数ともに、高群は低群に比べてBMIが高い軌跡を示すとともに、空腹感高群は低群よりも早い上昇がみられました(図1b、図1c)。さらに、このGene risk scoreとBMIとの関連は、脱抑制により約34%説明できることが統計学的に推定されました(図2)。一方で空腹感は10%程度にとどまっていました(図2)。

 今回の研究は遺伝的に肥満になりやすい人に対して、脱抑制に関連した食行動を評価し行動変容を促すことや食環境を変えることで、肥満を予防できる可能性を示しました。しかしながら、人種や文化が異なるため、日本人でも同様の結果が得られるとは言えません。本成果を応用する上でも、日本人におけるエビデンスが必要であると考えます。

 本研究成果は、国際学術誌International Journal of Obesityにオンライン掲載されました。

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【論文情報】

掲載誌:International Journal of Obesity

題名:Appetite disinhibition rather than hunger explains genetic effects on adult BMI trajectory.

DOI:10.1038/s41366-020-00735-9

著者:Eric J Brunner*, Koutatsu Maruyama*, Martin Shipley, Noriko Cable, Hiroyasu Iso, Ayako Hiyoshi, Daryth Stallone, Meena Kumari, Adam Tabak, Archana Singh-Manoux, John Wilson, Claudia Langenberg, Nick Wareham, David Boniface, Aroon Hingorani, Mika Kivimäki, Clare Llewellyn.

*These authors contributed equally: Eric J. Brunner, Koutatsu Maruyama