愛媛大学農学部・大学院農学研究科

吉原健太郎さん(農学研究科1年生)、松原涼さん(農学部4年生)の論文が英国の国際学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されました【3月8日(火)】

 渡辺誠也 大学院農学研究科教授(沿岸環境科学研究センター教授 兼任)、吉原健太郎 大学院農学研究科修士課程1回生(生命機能学専攻 応用生命化学コース 生化学教育分野所属)、松原涼 農学部4年生(生命機能学科 応用生命化学コース 生化学教育分野所属)渡邊康紀 山形大学理学部講師の研究グループは、細菌のL-アラビノース代謝経路に関わるL-アラビノース1-脱水素酵素(AraDH)の立体構造をX線結晶回折により初めて明らかにしました。

 AraDHには、Glucose-fructose oxidoreductase(Gfo)型とShort-chain dehydrogenase/reductase(SDR)型の2種類があり、いずれも渡辺教授により2006年と2019年に初めて発見されました。同じ反応を触媒するにもかかわらずアミノ酸配列は全く異なっており、進化の過程で独立に生じたと考えられます。このうちSDRの中には、L-アラビノース以外のアルドースを基質とする脱水素酵素も複数含まれており、我々のグループはこのうちラムノース1-脱水素酵素の立体構造を2020年に報告しています。今回決定したAraDHの全体構造はこうした酵素とよく似ていましたが、基質認識に関わるアミノ酸残基の種類と位置には大きな違いが見られました。また、補酵素のNAD+に対する特異性に関わる残基にも違いがありました。SDRは非常に大きなタンパク質ファミリーですがまだまだ機能未知タンパク質が眠っており、生化学的解析と構造生物学的解析を組み合わせることで、今後も新たな酵素の発見と分子進化の謎に迫ってきます。

 本研究成果は、2022年3月8日に英国の国際学術誌Biochemical and Biophysical Research Communicationsにオンライン掲載されました。本研究成果の一部は、農学研究科研究グループARG、愛媛大学研究業績数改善促進費の助成を受けました。

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吉原健太郎さん
 
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松原涼さん
 
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AraDHの結晶と酵素に結合した補酵素(NAD+)

 【吉原健太郎さん(共筆頭著者)からのコメント】

私が携わった論文はこれで3報目ですが、今回は先生方だけでなく後輩も交えての成果です。後輩に手法を伝授しながら実験・考察を進めることで、先輩としての役割を学ぶことにも繋がりました。研究者としてだけでなく人間としても成長できた論文だと思っています。引き続き精進します。

【松原涼さん(共著者)からのコメント】

本研究には私が研究室に所属して間もないころから携わっており、指導教員である渡辺先生や先輩である吉原さんからきめ細やかなご指導をいただきました。学部生ながら論文発表される研究に携われたことはかけがえのない経験であり、幸せに思います。私は4月から就職しますが、本研究に取り組んだ経験を胸に自身の業務に尽力したいと思います。

【渡辺教授(筆頭著者・責任著者)からのコメント】

結晶化と構造決定を一生懸命やってくれた松原さんの卒業に間に合ってよかったです。

【論文情報】
掲載誌:Biochemical and Biophysical Research Communications 604, 14-21 (2022)
題名:Crystal structure of L-arabinose 1-dehydrogenase as a short-chain reductase/dehydrogenase protein.
DOI:10.1016/j.bbrc.2022.03.028
著者:Seiya Watanabea,b,c,1,*, Kentaroh Yoshiwarab,1, Ryo Matsubaraa, Yasunori Watanabed
a Faculty of Agriculture, Ehime University, 3-5-7 Tarumi, Matsuyama, Ehime 790-8566, Japan
b Department of Bioscience, Graduate School of Agriculture, Ehime University, 3-5-7 Tarumi, Matsuyama, Ehime 790-8566, Japan
c Center for Marine Environmental Studies (CMES), Ehime University, 2-5 Bunkyo-cho, Matsuyama, Ehime
790-8577, Japan
d Faculty of Science, Yamagata University, 1-4-12 Kojirakawa-machi, Yamagata, Yamagata 990-8560, Japan
1 These authors contributed equally to this work.
* Corresponding author