愛媛大学農学部・大学院農学研究科

大西祥太さん(農学研究科1年生)、山本悠介さん(農学研究科1年生)の論文が日本農芸化学会の国際学術誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」に掲載されました【3月15日(火)】

 河田美幸 大学院農学研究科准教授(学術支援センター,プロテオサイエンスセンター准教授 兼任)、大西祥太 同修士課程1年生(生命機能学専攻 応用生命化学コース 遺伝子制御工学教育分野所属)、山本悠介 同修士課程1年生、秋山浩一 学術支援センター准教授(大学院農学研究科准教授 兼任)、関藤孝之 大学院農学研究科教授(プロテオサイエンスセンター教授 兼任)の研究グループは、分裂酵母の新規液胞膜タンパク質(Vsb1p)を同定し、そのアミノ酸蓄積における機能を明らかにしました。

 真核微生物である酵母では、動物細胞のリソソームに相当する「液胞」という細胞内小器官が発達しています。液胞には多量の遊離アミノ酸が蓄積しており、特にリジン、アルギニン、ヒスチジン(塩基性アミノ酸)はその多くが液胞内に存在します。これらは細胞が飢餓状態に陥った際にサイトゾルへと排出され、飢餓条件を生き抜くためのタンパク質合成にリサイクルされます。我々のグループは、2021年に出芽酵母液胞への塩基性アミノ酸蓄積における主要因子(Vsb1)を特定し、その機能解析を進めてきました。今回、出芽酵母とは分子系統的に離れた種である分裂酵母においても同様のタンパク質が働いていることが分かったことから、液胞への塩基性アミノ酸蓄積は、真核微生物に共通する重要な生理的現象であると考えられます。

 本研究成果は、2022年3月15日に日本農芸化学会の国際学術誌Bioscience, Biotechnology, and Biochemistryにオンライン掲載されました。本研究成果の一部は、農学研究科研究グループARG、愛媛大学研究業績数改善促進費の助成を受けました。

【大西祥太さん(筆頭著者)からのコメント】

今回の論文は、いまだ明らかになっていない液胞へのアミノ酸集積メカニズム解明の足掛かりとなるのではないかと考えています。さらに研究を進めて液胞機能の全てを明らかにし、さまざまな産業分野における酵母液胞の有用性を示したいと思っています。

【河田准教授(共筆頭著者)からのコメント】

実験の計画、実施から論文原稿執筆までの全てに関わった大西さんにとって、初の筆頭著者論文となりました。研究成果を論文として発表するということはどういうことか、これから研究を仕事としていくための良い第一歩が踏み出せたのでは、と思います。

【論文情報】
掲載誌:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
題名:A vacuolar membrane protein Vsb1p contributes to the vacuolar compartmentalization of basic amino acids in Schizosaccharomyces pombe.
DOI:10.1093/bbb/zbac041

著者:Shota Ohnishi1,†, Miyuki Kawano-Kawada 1, 2, 3, †, Yusuke Yamamoto 1, Koichi Akiyama 1, 3, and Takayuki Sekito 1, 2, *
1 Graduate School of Agriculture, Ehime University, Matsuyama, Japan
2 Proteo-Science Center, Ehime University, Matsuyama, Japan
3 Advanced Research Support Center, Ehime University, Matsuyama, Japan
*Corresponding author, † These authors contributed equally to this work.

大西さん.pngのサムネイル画像
大西祥太さん
 
緑色蛍光タンパク質(GFP)融合型Vsb1(左図)を発現させた分裂酵母の顕微鏡写真.pngのサムネイル画像
緑色蛍光タンパク質(GFP)融合型Vsb1(左図)を
発現させた分裂酵母の顕微鏡写真