愛媛大学農学部・大学院農学研究科

大学院農学研究科の丸山広達准教授と修士課程2年生のSalsabila Khairunnisaさんらによる研究成果が国際学術誌に掲載されました

 大学院農学研究科の丸山広達准教授、同研究科アジア・アフリカ・環太平洋留学生特別コース2年生のSalsabila Khairunnisaさんが、本学医学部等との共同研究である、愛媛県東温市にて実施している疫学研究「東温スタディ」において、中高年者を対象に分析した結果、魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸を多く摂取している人ほど、動脈硬化の指標である頸動脈内膜中膜複合体の厚い人が少ないという研究結果を発表しました。

 頸動脈内膜中膜複合体は心疾患や脳血管疾患の発症リスクを高めることがわかっています。先行研究では、魚やn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いほど頸動脈内膜中膜複合体が薄いことが示されています。しかしながら、魚や摂取量が比較的多い食文化をもつ日本人のような人種における報告は多くありませんでした。
 今回の研究では、2009年から愛媛県東温市にて実施している疫学研究「東温スタディ」(HP:https://www.toon-study.jp/)に参加している約1,800名の中高年男女を対象に、食物摂取頻度頻度調査により習慣的な魚やn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量を推定するとともに、頸動脈内膜中膜複合体の厚さを測定し、3グループ(低度:1.1㎜未満・中等度:1.1-1.4㎜・高度:1.5㎜以上)に分類しました。魚とn-3系脂肪酸の摂取量それぞれを摂取量の順に3グループに分け、まずは3群間の頸動脈内膜中膜複合体の多変量調整平均値を算出したところ、魚とn-3系脂肪酸の摂取量が多いほど、その平均値が低い傾向があることがわかりました(図1)。
 さらに、低摂取群に対する中程度摂取群、高摂取群等度それぞれの、中等度のC-IMTならびに高度C-IMTの出現オッズ比を求めました。その結果、n-3系多価不飽和脂肪酸摂取量最低群に比べ、最高群では高度頸動脈内膜中膜複合体の出現オッズ比が有意に低いことがわかりました(図2)。
 今回の研究結果は、横断研究というデザインであるため、必ずしもn-3系多価不飽和脂肪酸摂取量が多いことが、高度頸動脈内膜中膜複合体を予防したという因果関係を立証できていません。また今回用いた魚やn-3系多価不飽和脂肪酸の推定摂取量には一定の誤差が生じている可能性等も考慮する必要があります。
 しかしながら、先行研究の結果等も踏まえると、本研究の結果は、魚やn-3系脂肪酸の摂取量が比較的多い日本人集団であっても、魚やn-3系多価不飽和脂肪酸の積極的な摂取は、動脈硬化性疾患を予防できる可能性があることを示しています。

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 本研究成果は、国際学術誌Nutrientsにオンライン掲載されました。

【論文情報】
掲載誌:Nutrients
題名:Association of Fish and Omega-3 Fatty Acid Intake with Carotid Intima-Media Thickness in Middle-Aged to Elderly Japanese Men and Women: The Toon Health Study.
DOI:10.3390/nu14173644
著者:Koutatsu Maruyama*, Salsabila Khairunnisa*, Isao Saito, Takeshi Tanigawa, Kiyohide Tomooka, Satomi Minato-Inokawa, Madoka Sano, Misaki Takakado, Ryoichi Kawamura, Yasunori Takata, Haruhiko Osawa.
*共同筆頭著者